多層裁断時の生地スリップ対策と中古機の調整ポイント厚物・多枚重ね裁断でも精度を安定させる方法

多層裁断はアパレル生産の効率を大きく左右する工程ですが、生地のスリップ（ズレ）が発生しやすい難しい作業でもあります。
特に中古裁断機では、吸引力の低下やレール精度の劣化などが要因となり、スリップが増えるケースが見られます。
本記事では、多層裁断時に起こるスリップの原因と対策、そして中古裁断機で実施すべき調整ポイントをまとめて解説します。

① 多層裁断時に発生しやすいスリップの種類

• 横方向のズレ：裁断中に生地が横に動きパーツ寸法が変わる。
• 縦方向のズレ：引っ張りや吸引不足で上層と下層の長さが変わる。
• エッジシフト（縁ズレ）：層を重ねるほど端がずれやすい。
• 滑り素材での重なりムラ：ポリエステルやサテンは層間ズレが顕著。
• 厚手裁断時のヨレ：抵抗が大きくなることで刃が押されズレが発生。

② 中古裁断機でスリップが起こる原因

• 吸引力の低下：多層時に十分に布を固定できずズレが発生。
• レールの摩耗：走行が不安定となり裁断ラインに誤差が出る。
• 刃物摩耗による抵抗増加：切れ味不足で押し込みが発生しズレやすい。
• テンションムラ：敷き布・延反状態の不均一がズレの原因に。
• 裁断スピードの不適合：スピードが速すぎると多層でズレやすくなる。

③ スリップを防ぐための素材別対策

• 滑りやすい素材（ポリエステル・サテン）：層数を減らす・シートで押さえる・吸引強化。
• 厚手素材（デニム・キャンバス）：低速裁断・刃物を鋭利に保つ。
• 伸縮素材（スパン・ニット）：引っ張らない裁断を徹底しテンション均一化。
• 混紡素材：素材ごとの滑り具合を見て層構成を調整。
• 静電気が出やすい素材：帯電防止剤・加湿・アース対策が有効。

④ 中古裁断機の調整で改善できるポイント

• 吸引システムの整備：フィルター清掃・吸引ホース確認・モーター点検。
• 刃物の研磨・交換：多層裁断では切れ味が特に重要。
• レール直進性の調整：ガタつきがあるとスリップが増加。
• 裁断スピード調整：素材・層数に合わせて最適な速度に設定。
• 敷き布・延反の見直し：波打ち・テンションムラをなくす。

⑤ 多層裁断スリップ対策の一覧表

⑥ まとめ：スリップ対策で多層裁断の精度は大幅に向上する

多層裁断は効率化の鍵となる工程ですが、生地スリップによる品質低下が大きな課題になります。
しかし、吸引・刃物・レール・スピードなど主要ポイントを調整することで、中古裁断機でも安定した精度を確保できます。
素材特性と機械の状態を踏まえて対策を行うことで、多層裁断でも新品機と遜色ない品質を実現することが可能です。

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