中古プレス機械のトン数選定と加工能力の見極め方過不足のないプレス能力を選ぶための実務ガイド

プレス機械の導入・入れ替えを検討する際、「何トンのプレス機を選べばよいか」は非常に重要なポイントです。
特に中古プレス機では、カタログ値だけでなく、実際の加工条件や機械状態を踏まえたトン数選定・能力判断が求められます。
本記事では、中古プレス機のトン数選定の考え方と、加工能力を見極めるための具体的なポイントをわかりやすく解説します。

① プレス機の「トン数」とは何を示す指標か

• 最大加圧能力：スライドが下死点近傍で発揮できる最大荷重を示す。
• カタログ値は理論値：実際には機械状態により有効能力が変動する。
• ストローク位置による違い：最大トン数が出る位置は限定されている。
• フレーム剛性との関係：トン数だけでなく、たわみ量も加工精度に影響。
• 金型設計とのセットで考える：金型に必要な荷重から逆算して選定するのが基本。

② 必要トン数を概算するための基本要素

• 板厚：厚くなるほど必要トン数は増加。
• 材料強度：ハイテン材・ステンレスは軟鋼より荷重が必要。
• 加工面積（せん断長）：打ち抜き長さ・曲げ長さがトン数に直結。
• 加工種類：打ち抜き・曲げ・絞りで必要能力が変わる。
• 安全率：計算値に対して20〜30％程度の余裕を持たせるのが一般的。

③ 中古プレス機で注意すべき能力低下要因

• フレーム疲労：長年の高負荷運転で剛性が低下している場合がある。
• ボルスター・スライドの磨耗：面精度が落ちると実質的な加工能力も低下。
• クランク・ピン・ベアリングのガタ：偏芯や振動が増え安定した荷重が出しにくい。
• オーバーロード履歴：過負荷運転が続いていた機械は能力劣化のリスクが高い。
• メンテナンス不足：潤滑不良・調整不足も加工能力に影響する。

④ トン数別に見る代表的な加工用途の目安

• 20〜45tクラス：小物部品の打ち抜き・曲げ・端面加工など。
• 60〜110tクラス：自動車・家電向け中小物プレスに多く使用。
• 150〜200tクラス：やや大物の曲げ・絞り加工に対応。
• 250t以上：大型パネル・深絞り・多工程金型ライン向け。
• サーボプレス：トン数だけでなく、荷重パターン制御で高精度加工に対応。

⑤ トン数選定・能力見極めのチェック一覧表

⑥ まとめ：余裕を持ったトン数選定が安定生産のカギ

中古プレス機のトン数選定では、「現在の製品にギリギリの能力」ではなく、将来の加工内容や機械の経年劣化も見据えた余裕ある選定が重要です。
材料・板厚・加工長さから必要トン数を概算し、中古機特有の能力低下要因を踏まえて、実加工テストで最終確認を行うことで、導入後のトラブルリスクを大きく減らせます。
適切なトン数選定と機械状態の見極めにより、中古プレス機でも安定した生産と高い品質を十分に実現することが可能です。

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